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介護・福祉人材の定着事例集~やる気・元気をひきだす取り組みの紹介~

調査のねらい

福祉の職場では、長年にわたり人材の確保・定着が課題となっています。とりわけ介護の職場では、年間約24万人(平成25年6月)の入職がある一方、約22万人が離職するという状態が続いています。そこで中高年齢者の方や外国人の方などに対象を拡大し、担い手不足を補う取組も積極的に行われていますが、人材不足の解消になかなか至っていない状況です。こうした状況に、引き続き介護人材を増やすため担い手確保に取り組むことが求められていますが、一方で、確保できた福祉の人材が離職せずに長く働き続けられるよう、その定着に向けた職場での工夫・改善が必要と言えるでしょう。

岐阜県内の介護の職場では、令和2年度の離職率は11.9%((公財)介護労働安定センター調査)ですが、これを3年平均で下回るかに着目し、その達成につながる効果的な取組を行っている県内の事業所を発掘するため、令和2~3年度高齢、障がい、児童の3分野で事業所の調査を行いました。

本資料では、人材の定着が良好若しくは改善している背景や、それに結び付いたと思われる具体的取組内容、さらにはその要因について分析し、県内で人材の定着が比較的うまくいっている事業所の例を事例集として紹介することとしました。

取り組みを紹介する事業所

  • …高齢者福祉施設
  • …障害者福祉施設
  • …児童福祉施設
社会福祉法人 新生会 小グループで自由に話し合い、職員を認め、気にかけ、悩みの解消も 詳 細 ホームページ
社会福祉法人 同朋会 些細な出来事でも素早く気づいて対処、職員が一人で抱え込まない 詳 細 ホームページ
社会福祉法人 白寿会 週休3日制や、ICT化・ロボット等の導入を積極的に行うなど働く環境の整備により離職防止 詳 細 ホームページ
特定医療法人 フェニックス
社会福祉法人 フェニックス
子育て世代の従業員支援と、働き方の多様性への対応が職場のモチベーションアップと生産性向上のカギ 詳 細 ホームページ
医療法人 香徳会
介護老人保健施設 太陽苑
公認心理師によるSOSの出し方など新人職員向け研修に注力 詳 細 ホームページ
医療法人社団橘会
介護老人保健施設 西美濃さくら苑
計画的にキャリアアップする仕組みの導入や介護助手採用により専門職の負担を軽減 詳 細 ホームページ
社会福祉法人 万灯会
障害者支援施設 双樹園
管理者の受容的態度と利用者・職員の拠り所があって、離職者ゼロに 詳 細 ホームページ
社会福祉法人 平成会
障害者支援施設
いちいの杜ハートフル
職員の健康状態に合わせた柔軟な働き方への配慮 詳 細 ホームページ
社会福祉法人 桜友会
児童心理療育施設 桜学館
業務体制を整えることと、職員一人ひとりに対するきめ細かな対応が職員のモチベーション向上に 詳 細 ホームページ

人材定着につながる要因とその判定

今回の調査を進める上では、福祉の事業所において定着につながる取組やその要因を次図のとおり6つの指標を設けて考察しています。①~⑤は、人の職務に対する不満につながる要因を除去する指標であり、事業所における職員の働き方に影響を与える職場の環境整備の取組として人材定着につながるかを判定する上で、必要条件とも言える指標です。これに対し、⑥は人の職務に対する満足につながる要因を表す指標であり、職場における人材定着につながる十分条件とも言えるものです。この両者が揃ってはじめて職場で働く人の満足ややりがいが得られる、ということではないかと考えられます。

今回の調査では、紹介している9事例について、上記の①~⑤の指標及び⑥の指標の該当の有無を文末に表示させていただきました。これは調査事業所から申し出のあった人材定着に効果的な取組に対し、センターが確認し、調査の中で浮かび上がった取組を付け加えて表示したものです。従って、対象事業所で特に効果的とは意識していないものは該当無の表示となっていますが、事例としてとりあげた事業所では、該当無の指標でも何らかの取組が行なわれていることを確認しています。そして、人材定着の十分条件と考えられる⑥の指標については、紹介する全ての事例で取組が行われていることが確認できました。

事例の6指標ごとの取組例

6つの指標毎に今回の事業所の事例を概観すると、①「定期的な面談の実施」では、人事考課のフィードバック面接などで管理者が受容的な態度で臨んでいる例や、管理者が日頃から職員の良いところを書き留めてほめるようにしている例、また、面談の結果職員の健康状態に課題があれば、勤務形態を柔軟に調整し、周囲にも知らせる工夫をしている例などが見られました。②「処遇・福利厚生の充実」では、週休3日制(10時間勤務制)により、引き継ぎの円滑化や職員の私生活充実につながっている例や、託児料金ポイント制の導入で、事業所内保育所や学童保育施設に子どもを預けて働く子育て中の職員の土日のがんばりなどを引き出し、評価する例が見られました。

③「計画的な職員育成」では、初任、中堅、幹部ごとに事例研究発表会で現場の課題への対応を考える機会を積極的に創出している例や、職種ごとに経験年数に応じて参加する研修や取得する資格を可視化するキャリアパスシートを作成している例が見られました。④「新規入職者への安心づくり」では、メンターシップ制度やプリセプター制度を導入するとともに、サポート期間明けの新人職員にさらに職場全体でフォローする体制をとっている例や、公認心理士によるSOSの出し方などの指導を含む新人職員向け研修に力を入れている例が見られました。

⑤「負担軽減につながるロボット等の導入」では、見守りセンサーや移乗リフト等の積極的導入により、夜勤時の見守りや腰痛といった職員の負担軽減に資する例や、介護助手を採用し介護の周辺業務を担ってもらうことで、介護職が介護業務に専念できるようになった例を見ることができました。⑥「やる気につながる職場カルチャー」では、職員の思いを管理者に何でも聞いてもらえるような風通しの良い職場や、組織目標を掲げ、それに向けて努力する人や提案を評価する仕組みを設けている職場の例など、各事例で取組が見られました。

人材定着を促進するために

令和3年度に、「どうしたら職員が仕事を辞めずに働き続けられるか」について、識者の意見を伺いました。そのポイントは次のとおりです。

①「定期的な面談の実施」に関し

  • 職員の悩みは傾聴すること。そして本音を聞き出すこと。
  • 面談や日々の業務点検などで気になったことは、素早く対処し解決すること。

②「処遇・福利厚生の充実」に関し

  • 職員は給与(処遇)について、自分が正当に評価されているか大変気になるもの。
  • 処遇に不満があって退職するというケースには、人事や賞与等で配慮すること。
  • 夜勤手当を他の職場より引き上げることも。

④ 「新規入職者への安心づくり」に関し

  • 新人職員にはよく声をかけることが大事。

⑥「やる気につながる職場カルチャー」に関し

ア.人材マネジメントのあり方について

  • もっと自分に仕事を任せて欲しいという人には、責任ある仕事を与える。
  • 職員によっては、目標(ハードル)を少し上げて達成感を味わってもらい、その成長を促すこと。
  • 人間関係で難しければ、その部署から異動させることも一つの方法。
  • 家の都合で職場を空けた場合、翌日のミーティングで謝罪やお礼を言う場を設ける。感謝の気持ちは言葉
  • に表すようにする。また、日頃の職員間のカバーを言葉にしてねぎらい合うことも。
  • 風通しの良い職場づくりのため、パワハラ研修を全職員対象に行うこと。
  • 職員の提案に対する職場の対応結果を見える化すること。

イ.部下への向き合い方について

  • 毎朝の声掛けなどあいさつを心がける。職員が元気かどうかもチェックする。
  • 部下の話は部下目線で聞くこと。相手の人間性を尊重する指導を。
  • 相談しやすい上司を目指す。時には人生相談にも乗る。
  • 特定の職員に肩入れし過ぎないバランス感覚を。
  • 人間関係に問題がある場合、その双方の話をよく聴くこと。本人に問題がある場合もあり、我慢することの涵養も大事。

調査からわかったこと

今回の調査では、近時の離職防止の意識の高まりから人材定着をとりあげましたが、人材定着につながる取組を分析すると、それは現場の職員にとって働きやすい職場づくりに直結するものであることがわかります。福祉の仕事は対人援助サービスです。職場における上司と部下、また職員同士のコミュニケーションが円滑であるかどうかが働きやすさにつながりますし、コミュニケーションが豊かな職場は利用者へのサービスにおいても質の高さが期待されるのではないでしょうか。

さらに、今回の調査から分かったこととして、職員と利用者が同じ方向を向いて活動することができる職場は、職員のモチベーション向上につながっているということです。例えば、障害者支援施設の例にみられるように、利用者が毎日行う作業を職員もサポートしながら一緒に働く時、利用者が福祉サービス提供の相手であることを超えて、ともに生きる(働く)仲間であると寄り添う気持ちが深まるのだということを知りました。各事業所では、職員や関係者が共通で目指すべき法人理念や事業所目標といったものを掲げ、それを達成するための手法を日々工夫しています。そうした職員にとっての拠り所となるものの存在が大切であることも知ることができました。それが組織のトップであったり、リーダー的な職員であったりする例について、今回見ることができました。

この事例集が、職場の労務管理や事業所サービス向上に関わる関係者の皆様、また、これから福祉の職場で働いてみようとする方々にとって、少しでも参考になれば幸いに思います。

令和4年2月1日
岐阜県福祉人材総合支援センター

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